コミュニケーションの場は、様々なところで創ろうと思えば創り出せる。最近は上司と部下のコミュニケーションだけでなく、組織内での横の関係や斜めの関係でのコミュニケーションによって、社員が働く場所での幸せを実感しながら仕事をしてもらおうということで、こうしたコミュニケーションについての取り組みに力を入れる動きを目にします。検索情報サービスで有名なヤフー株式会社の「1on1ミーティング」は、上司部下のコミュニケーションの強化という点では有名な取り組みです。こうした1on1だけではなく、様々な取り組みによって職場の人間関係を良くして、職場環境全体を良くして、働くことへの幸せを実感してもらえるような職場づくりにつなげている企業もあります。
「最高の働きがいの創り方」で登場する三村真宗氏が率いる株式会社コンカーの日本法人では、組織内のコミュニケーションをよくするために、様々な取り組みがされていることが、書籍の中で紹介されています。東京・銀座の「GINZA6」に入っているオフィスレイアウトの工夫や、「文化部」といった社内のレクリエーション活動等で、社員間のコミュニケーションを活発にする取り組みが行われています。これは、決してやらされているようなものではなく、それぞれの社員が自発的に取り組んでいるのです。もちろん、仕事に関係する場面でも、様々なミーティング(面談)が行われているという取り組みも紹介されています。
これらの面談は、かしこまってやるのではなく、ランチミーティングというスタイルで様々な関係をつくりながら進められています。そのなかでも、上司と部下のランチは「コミュニケーションランチ」という取り組みです。書の中では、「少しオフィスから離れて、食事をしながら自分の日々の悩みや家族や趣味のこと、将来の夢などを語る時間を、上司と部下の間で持てないか」をイメージしたものとあります。ギスギスした、業務上のことだけを話す関係では、正直お互いに心を開くことなんてできませんよね。こうして上司と部下のお互いの距離を縮めていく取り組みがされています。
また、上司との人間的な相性で、ランチをしただけでは解消されないということもあります。そういった人間的な相性の問題があることに目をつけて、「隣の部門の上長などがナナメの角度からアドバイスをしてくれたりすると、救われるのではないか」ということで、他の部署の上司とのランチ、他部署の上司とのコミュニケーションランチということで、「タコランチ」も行われるようになりました。他にも、新任のマネージャーとその先輩マネージャーとのランチや、新入社員に向けてのメンター(先輩社員)2名によるランチ、社長と1対1のランチなど、様々なランチの形態が採り入れられて、社員同士のコミュニケーションが図られています。
ランチという形の問題ではなく、いかに人間関係の問題を解消するか。そのための工夫なのです。幸せな職場をつくるうえで最も大きな阻害要因になっているのは、「人間関係の問題」です。誰かと誰かがうまくいかない、上司との相性がよくない、あの先輩との話では全然ダメ、など、人の問題が仕事の成果に悪い影響を及ぼしてしまいます。
私は、かつて自律神経失調症になって会社を休職した経験があります。このときには、職場の人間関係で正直疲弊してしまいました。話をしても、相談をしても、まともに話を聴いてもらえず、「○○すればいいじゃん、なんでやらないの?」といって、それ以上とりあってもらえませんでした。まったく話を聴いてもらえないと思い、心の中にある悩みや葛藤を話すことができず、職場の中で孤立してしまい、入社して約半年で休む羽目になってしまったことを思い出します。
その職場ではうまくいかなくて辞めてしまいましたが、その後の職場では、後輩が同じように孤立してしまわないように、特に中途で新しく入ってきた社員には「最近どう?」などと、気持ちをほぐすために声がけをするようにしていました。こうして新しく入ってきた社員が、特に心理的に孤立しないように心がけました。人間関係で問題を抱えてしまっては、仕事をまともにやることすら難しくなります。ですので、少しでも職場に慣れて、仕事に慣れてもらおうと思い、コミュニケーションをとるようにしていました。
働きがいのある幸せな職場をつくりだすためには、様々な工夫が必要です。手段は無数にあっても、大切なのは、社員同士の人間関係です。中小企業の場合には、経営者と他の社員の人間関係が重要です。社員が経営者に嫌われないようにしようと、あまりコミュケーションをとらないような状況が見られるとしたら、人間関係になにか問題のある兆しなのかもしれません。人間関係の問題があるとしたら、やはりどこかで改善をしなければいけない。大きな組織であれば、コンカーのような取り組みを参考してみるといいでしょう。様々な関係を活用する事ですね。一方で中小企業の場合には、人数が少ない場合には、組織内だけで完結する問題ではないでしょう。組織外の人間関係問題の専門家などもうまく使うと良いと思います。
私は産業カウンセラーとして、人間関係の問題にも研修などでかかわっています。時々組織内の人間関係で、どのように社員の育成を進めればいいか、どのように処遇すればいいかといった、経営者や人事部門からのご相談もいただいております。こうした組織外の専門家をうまく利用するのも一つですね。人間関係にかかわる悩みがなくなって仕事で結果を出せる人材が増えてくれば、働きがいを実感できる職場になっていくのではないでしょうか。

昨日は、静岡県富士宮市にある「富士山本宮浅間大社」にいってきました。なにか悩みがあったときには、神頼み、というのもあるかもしれません。こうした人間関係の問題が世の中からできるだけ少なくなり、「働くことに幸せを実感する職場」が増えて、業績の向上や人材の定着につながる組織が増える社会になってほしい。そんな祈りが届いてほしいですね!
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