前の記事でパワハラに関することを書きましたが、やはりパワハラに対しては、いろんな職場で過敏になっているようです。特に管理職の方々からの相談が多く寄せられます。
よく相談されるのは、「こんな事を言ったらパワハラになるんじゃないか」という悩みです。言葉の内容に関することですね。なにかの言葉を発することにパワハラとされるリスクを感じるという気持ちが強いようです。ハラスメント問題に対して世間の関心の高さを示す表れといえますが、過剰すぎるような気がしてならないのです。
前の記事で、指導のやり方に関して指摘したのですが、これは、「クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち」(PHP新書)という本の著者でも知られる筑波大学教授の松崎一葉氏が、「パワハラの行為者は、指導の内容ではなく指導の方法に問題があるということを認識する必要がある」、と、ある場で話されていたことがきっかけです。
上司が指示したことが守られていなくて、部下が指導される場面は多々あると思います。そのときに、なぜ指導が必要なのかといいますと、指導したことで部下が成長し、組織にとっての成果につながるための行動ができるようになることがのぞまれているからというのが一つあるでしょう。その他にもいろいろと理由はありそうですが、上司は、部下育成の役割を担います。場面によっては、部下の成長や組織の成果を考えた場合に、指導が必要となるのは当然です。
指導が必要になる場合は、部下が指示通りの結果が出ていないときや、指示通りの結果が出ていても、そのやり方にまだまだより良くする余地があるときなどです。新しい仕事を教える際にも、部下への指導は欠かせないでしょう。このときに、指導内容は上記に沿ったものになるとしても、指導のやり方についてはどうなのかということです。昔のような指導のやり方がそのまま受け容れられるかというと、そうではない、ということです。
たとえば、ある職場では、上司が部下に指導をする場面で、期待通りに仕事の成果が出ていないことに対して、ひたすら大きな声で「なんでだ!なんでだ!なんで!」と繰り返す場面があったそうです。上司から問い詰められた部下が顔から血の気がひいていて何も答えられなくても、ひたすら、「なんでだ!」、を繰り返し、部下が答えられなかったり、間違ったことをすると、「だからお前はバカだ」とか、「死ね」という言葉を随所に織り交ぜながら部下に指導するということです。大声で部下に声をかけて問い詰めて乱暴な言葉を指導の場面で使う。指導のやり方に大いに問題があります。気持ちが熱くなっても、乱暴な言葉を繰り返されれば人は嫌になってしまうのは明らかですよね。「死ね」じゃなければいいかというと、そういう話でもなく、そもそもこうして上司が部下を問い詰め続けて気持ちが高ぶってしまって、乱暴な言葉を使うという指導のやり方についての話です。
かつて、上司である方々が部下であったころにはなんとも思わなかった言葉であっても、今の部下が同じようになんとも思わないといえるか?そんなことないですよね。「バカ」、とか、「死ね」、といって、部下が怒りに震えて奮起するかといえばそんなことはないでしょう。相手がどう思うかも考えずに、上司自身の思いだけで怒りをぶつけるのはいかがなものか。まあ、ここまでくればやり方が悪いでは済まないですね。部下の人しての尊厳を否定していると、外から見れば感じてしまいます。
では、指導の際にどのようなことを伝える必要があるか。内容を絞って伝えることができているかが問われるのです。仕事の納期に遅れてしまったのてあれば、納期に遅れた事実をまず指導する。そこから派生して、さまざまなことを追及し、挙げ句の果てに、バカとか死ねとか言うのは果たして指導なんでしょうか?事実と原因を確認し、改善をする内容とその後の行動を合意形成して済む話です。腹が立って余計なことを言って感情をぶつけて乱暴な言葉使って指導をするから問題になるのです。
話が飛びましたが、指導のやり方を見直す必要があれば見直しましょう。上司自身の感情をぶつけて場当たり的な指導をするのをやめる。自分の机の横に部下を長時間立たせるのをやめる。これだけでもやり方はまず一歩改善です。
それ以前に、上司は日々部下を見ていますか?私は、研修でよく言うことです。部下の姿形を見るということもそうですし、メールやチャットワーク、ラインなどでのやりとりをするのも部下を見ることです。仕事ぶりを見ているかということです。見ていないと、つい、上司の感情をぶつけてしまうような指導のやり方になるのだと、私は思います。
乱暴な言葉で部下の尊厳を傷つけないこと、指導のやり方を見直すことです。決して指導するなということではありません。あまりにも乱暴な言葉は論外ですが、部下に言い過ぎたと感じたらきちんとフォローして、よく部下を見てくださいね。
私もかつては、部下に心無い言葉をかけて傷つけた経験もありますし、メールの文章が全然だめだと怒りをあらわにしてプリントアウトした紙を部下に投げつけたこともありますし、感情的になって、バカ、と部下に言ったこともあるような、パワハラまがいのことをしたことのある中間管理職でした。だからこそ、パワハラなどが起こる職場を無くしたいという思いが強くてハラスメント防止コンサルタントになりました。職場のコミュニケーションを良くして関わるみなさんが健全な気持ちで働けるように、これからもパワハラについては、日々、さまざまな方々を支援できるようにしていきます。画像の本を書いたのも、上記のような思いからです。
なにかありましたら、是非私に一声かけてくださいね!
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